亞里亞と雛子の内緒のお部屋
ポカポカした小春日、太陽は優しく身体を照らして眠気を誘います。まなこを擦って大きなあくびをすると胸いっぱいに若草の香りが広がりました。すっかり春です。
遅い昼食を終えた亞里亞ちゃんと雛子ちゃんはベランダで日向ぼっこをしているうちに眠くなってきました。今日も大好きな兄は・・・雛子ちゃんは「お兄タマ」亞里亞ちゃんは「兄や」と呼ぶ。家を留守にしているし、他の姉妹も出かけてしまって朝からずっと暇しています。
優しい、そよ風が吹いて雛子ちゃんはクマの人形を抱きながらコクリコクリとしてしまいます。横を見れば亞里亞ちゃんはパラソルの下で寝息を立てていました。
「フ〜ン」
雛子ちゃんは可愛らしくのびをします。
ぬいぐるみをクレヨンに持ち替えてお絵かきを続けました。大好きなお兄タマにいっぱい絵を書いて「えらいね」って誉めてもらうんだもん。てなことを考えながら紙の上にクレヨンを走らせます。でもでも、おねむな雛子ちゃんはクマさんを枕に寝てしまいました。
「おにいタマ・・・」
かわいい寝言です。
小一時間後・・・。
「ありり・・・雛ねちった」
小さいなおててで目をこすります。大変、すごっく大事な絵がありません。
「あうあうあうあう」
雛子ちゃんはベランダ中を探します。クマさんの下やベンチ、植木の中、洗濯籠もひっくり返したけどやっぱりありません。怖いけどベランダからお庭を覗いてもやっぱりありませんでした。
「ぐす・・・ひーなは・・・げんき・・ぐすんぐしゅ・・・げ、げん・・げんき・・えい、ええ・・・えっぐ・・・うぉぉぉ」
泣きながら歌って涙をこらえます。でも、やっぱり涙が止まりません。
「ひーなは・・・えっぐ、えっぐ・・・・ぐしゅ・・・ないよぉ・・・だいじなだいじなお兄タマの絵が泣くなちゃったよ」
雛子ちゃんはエンエンと泣きながらベランダをウロウロ歩きます。あれれ? 亞里亞ちゃんがいません。
「?」
亞里亞ちゃんなら知ってるかも? そう思った雛子ちゃんは泣くのも忘れてベランダを飛び出して探しに行きます。
「ありあちゃーん。どこー」
亞里亞ちゃんのお家はとっても広いからみつかりません。それどころか人気もないから心ぼそくて泣きたくなってしまいます。
パタパタと音がして振り返ると亞里亞ちゃんの手の中に紙が一枚握られています。雛子ちゃんを見ると急いで走り出してしまいました。
「雛の絵」
雛子ちゃんはクマさんの手を握って走り出しました。あらあらクマさんが頭をガンガン打って引き摺られていきます。かわいそうですね。
クマさんが痛い思いをしている間に亞里亞ちゃんに追いつきました。唇をキュッと噛んで亞里亞ちゃんは絵を後ろに回して下を向いています。
「めーなの・・・・あ〜り〜あ知らないのぉ」
「亞里亞ちゃん。雛の、だいじなだいじな絵かえして、それでお兄タマにいっぱいいっぱいほめてもらうのクシシシ」
雛子ちゃんはすっごくうれしそうです。
「あ〜り〜あ・・・・しらない」
あれれ亞里亞ちゃんはウソをついてますね。手を後ろにしてしゃがんでしまいます。
兄やが雛子ちゃんの頭を撫でるのは見たくないから絵を返したくないみたいですね。
「返してよぉ」
プンプンです。雛子ちゃん真っ赤な顔で怒ってます。
「いやなの・・・兄や・・・亞里亞のなの・・・雛子ちゃん・・・・駄目なの」
あ、雛子ちゃんの手が亞里亞ちゃんの髪を掴みました。
「うう・・・かえしてよ」
「いやなの・・・・いやなの・・・」
亞里亞ちゃんは髪を引っ張られても中々放そうとしません。それどころか絵を強く握ってしまいます。
「あああ・・・ヒナの〜ヒナの〜エ〜ン」
絵がクシャクシャになってしまいました。
亞里亞ちゃんは透き通るような生真面目な顔で雛子ちゃんに・・・
「・・・・ごめんねなの・・・亞里亞・・・ごめんなの。くすん」
亞里亞ちゃんも声を出さないで嗚咽を上げて泣いてしまいました。
「どうしたの?」
そこに兄チャマが登場です・・・あ、いえ、兄が登場しました。ライオンのように優しくて強い兄は二人の妹を見つけると優しく声をかけます。ああ、なんてやさしいのでしょう。普通ならオロオロするばかりなのに、どしっりと落ち着いた物腰、そう例えるならば王者のように・・・(えんえんと兄を誉めるので省略しました♪ でも兄は純粋に気付いてないだけです)
二人の前でしゃがむと右手に亞里亞ちゃん、左手に雛子ちゃんをダッコします。うわぁ力持ちです。兄チャマの新しい秘密チェキです。
兄の上で争うように抱きつきます。
「うわぁ、暴れちゃ駄目だよ。あぶないよ」
ああああああ、うらやましいデス。
「お兄タマ」
雛子ちゃんはどさくさにまぎれてほっぺにチュウをしました・・・・・。
「はは、ありがと雛子ちゃん」
兄チャマも・・・・おかえしに・・・・・
「んんんんん」
反対から亞里亞ちゃんも・・・・
「ありがと亞里亞ちゃん」
兄チャマは二人をダッコしたまま廊下の向こうに消えていきました・・・・・。
・・・・・・・・・・。
ずるいデス・・・。
○
○月○日 四葉メモより抜粋。
「ねぇ二人とも・・・・どっちの方が兄チャマを好きデスか?」
翌日、四葉は、朝早くから亞里亞と雛子を秘密のお菓子部屋に連れ出していた。結論から言うとイタズラをしようとしているのだ。
「ヒナね。ヒナねお兄タマのこといっぱい、いっぱい。いいいいいいいっぱい大好きだよ」
両手を広げて飛び跳ねる雛子。
「亞里亞・・・・兄や・・・すき」
「うーん・・・・そうなの」、ワザとらしく困った顔をする四葉。とても邪悪な笑みを二人見えないようにしてつくります。そんな姿を心配そうに見上げる亞里亞と雛子。
名探偵が二人をチェキして困らせるデス。
(四葉は兄チャマの秘密を隠して二人に探させてクタクタに疲れさせようと考えました。
バンッ・・・・・
すいません。某所での揉め事がメールの応酬になり書けませんでした・・・。
解説
亞里亞×雛子のSS。もっと馬鹿っぽくした方が良かったかもしれない・・・。