千影が見た風景 第3章 その7
「鏡を見てごらん?」
生々しい傷跡と小さな雫で散りばめられた火傷。肌は紫色に変色していた。
「いやぁぁぁ」
数日振りにみた自分の姿は、惨めさと醜さに気が遠くなりそうになって思わず石床に伏して丸くなった。
そんな牝犬のかってな行動を許すわけもなく、千影の背中に再び鞭を降ろしてやった。
乾いた肌の弾ける音。
「鏡をみなさい!」
「痛い…わかった…み、みるから…もう…」
痛みに耐えかねて僅かばかりの勇気を振り絞って自らの姿を確認する。
「うく…ぐすっ…」
涙を流した。
女調教師は千影の後ろに回ると脇から両手を入れて吊り上げて、肘より下が無い腕にフックをかけてバンザイの格好で吊り上げた。ついで太股V字に開くとフックを同じようにかけて鎖で固定してやった。
千影はあっと言う間に万歳してV字を開くいやらしい格好で拘束されてしまった。
「いやぁ…こんなの…」
四肢を切断されて以来、千影は四足で歩かされるのが慣れ、自分の腹を見ていなかった。愛しい兄くんと分かれたまま、白いきめこまやかな生白い肌があり、羞恥で身を震わせて抵抗した。
女の指に強力なクリップが握られていた。
SMプレイで使われるようなバネが緩んだかわいいものでも、家庭用の洗濯バサミでもない。
純粋な拷問用のクリップだった。
犠牲者の肌を刻み、血と悲鳴を搾り出すためだけの道具を、吊られた無抵抗の玩具に見せ付けてやる。
「……」
千影は自分の立場を理解した。
カチカチと鎖がすれる音。二人が黙ればとても静かな部屋だった。
許しを請うために哀願しようかと思悩するが、千影のプライドが『必死の哀願』などすることを許されなかった。
女調教師は千影の反応をみると、あっさり小さな可愛らしい乳首を無残にも挟んで、さっそく部屋に玩具の泣き声で満たした。
「ひぎぃ…あ、ぐひぃぃああぁぁ」
鞭と違ってクリップには慈悲はない。ただ、機械的に苦痛を与えるだけだ。先ほどまでの鞭打は女の手で威力が調整され耐えがたい痛み寸前で手加減されていたのが良くわかった。
これは、本物の身体を壊すための器具にすぎなかった。
乳首から赤い筋が白い肌を伝って床に滑っていく。
千影の何も無い手が空をもがく様にかいていた。
解説
半年振りになってしまいました。おくれてすいません。
やる気になって書けば書けるものなんだなっと…